結核の基礎知識
最終更新日:2023年8月18日
結核ってどんな病気ですか?
結核は結核菌という細菌が感染、発病することによって起こります。結核菌は体内に入り込むと細胞分裂して増殖しますが、その速度は非常にゆっくりです。体内の増殖する場所によって、肺結核、腸結核、腎結核などを引き起こします。日本では「肺結核」が結核患者の約7割以上を占めています。
結核は昔の病気ではないんですか?
結核は、全国で毎年1万人以上の患者が新たに発生している、わが国で最大の感染症です。新潟市でも毎年40人以上の方が新たに登録されています。
また、多剤耐性結核菌の増加や結核集団感染・院内感染など、いまだに解決すべき多くの課題があります。
結核はどのようにしてうつりますか?
痰に結核菌が出ている患者がせきやくしゃみをすると、しぶきが空気中に飛び散ります。このしぶきの中の結核菌を吸い込むことによって、結核はうつります(空気感染)。
結核に感染していても、免疫がはたらいて、結核菌を抑え込んでいる(からだの外へ菌が出ていない)状態のうちは、周囲の人へ結核がうつることはありません。
感染したら必ず発病しますか?
結核に感染しても発病するのは10人に2人ほどです。残りの8人は、免疫力によって結核菌を抑え込むので、結核菌はからだの中で眠った状態のまま、悪さをすることはありません。
現在の日本では、高齢者を中心に約6人に1人がからだの中に眠った結核菌を持っていると考えられています。
どのような人が結核になりやすいんですか?
免疫力が落ちている等、菌を抑え込めなかったときに結核を発病します。また、感染してすぐに発病しなくても、後々なんらかの原因で免疫力が低下したときに、眠っていた結核菌が増え始め、感染から何十年も経って発病することもあります。
<注意が必要な方>
- 高齢者
- BCG接種前の乳児
- 糖尿病、腎臓病などの慢性疾患がある方
- 睡眠不足や過労など、疲れがたまっている方
- 栄養不足の方
- 大きな手術を受けた方
- ステロイド剤や抗がん剤を服薬している方
- HIVに感染している方
結核になるとどのような症状がでますか?
初期症状は風邪に似ています。以下のような症状が2週間以上続く場合は、結核の可能性も考え、かかりつけ医などに相談しましょう。
<よくみられる症状>
- 長引くせき
- 痰(たん)
- 37℃~38℃の微熱
- からだのだるさ
- 食欲低下
- 寝汗
- 体重減少
ただし、はっきりとした症状があらわれない場合もあります(特に高齢者)。日ごろから、健康診断を受けるなど、自身の体調管理をしておくことも重要です。
結核の検査にはどのようなものがありますか?
- 結核に感染しているかどうか調べる検査
ツベルクリン反応検査、IGRA検査(クォンティフェロン検査)
- 結核が発病したかどうか調べる検査
胸部レントゲン検査、CT検査
- 結核を排菌しているかどうか調べる検査
喀痰検査(塗抹検査)
ツベルクリン反応検査やIGRA検査はどのような検査ですか?
結核に感染すると、からだに結核に対する免疫ができます。ツベルクリン反応検査やIGRA検査は、この免疫の力がどのくらいあるかを調べることで、結核に感染しているかどうか判定します。
- ツベルクリン反応検査
ツベルクリン液の接種48時間後の発赤の大きさで感染の有無を判定します。
BCG接種にも反応して発赤が生じるため、結果によっては追加で血液検査を行います。
新潟市では、小学生未満の乳幼児が対象です。
- IGRA検査(クォンティフェロン検査)
特殊なたんぱく質を利用し、リンパ球を刺激した反応で感染の有無をみる血液検査です。
BCG接種の影響を受けないため、最近はツベルクリン反応検査に代わって広く実施されています。
感染時期までは分からないので、昔の感染で陽性が出る場合もあります。
新潟市では通常、70歳未満の方が対象です。
胸部レントゲン検査をするのはなぜですか?
結核は比較的ゆっくり進行し、発病初期は自覚症状がないこともありますが、多くの場合で肺に特徴的な所見があらわれます。そのため、結核の早期発見・早期治療には、胸部レントゲン検査が有効です。症状がなくても、職場検診や住民健診などを利用し、定期的に胸部レントゲン検査を受けるようにしましょう。
また、結核患者に接触した方に健康診断を受けていただく際、高齢の方は過去に結核菌に感染している方の割合が高いことから、感染の有無ではなく、発病しているかどうか調べるため、胸部レントゲン検査を案内することがあります。
結核を予防するためにできることはありますか?
結核は免疫力が低下した状態になると発病しやすくなるため、日ごろから免疫力を高めるように心がけましょう。持病の悪化や治療の影響などで免疫が下がる場合もあるので、かかりつけ医などによく相談し、体調を把握しておくことも重要です。
また、子どもの結核予防にはBCG接種が有効で、世界で広く用いられています。
<感染・発病予防のためにできること>
- 乳児期のBCG接種
- 規則正しい生活と十分な食事・睡眠、適度な運動など、日々の健康管理
- 年1回の健康診断(胸部レントゲン検査)
- せきエチケット(マスク着用など)
すでに結核に感染している方で、発病リスクが高く、治療のメリットが副反応のデメリットを上回る場合には、抗結核薬を内服し、発病を抑えることもあります。その判断は病状や生活背景によって異なるため、検査で感染が判明した際にかかりつけ医などとご相談ください。