市報にいがた 令和2年3月1日 2714号 1面・2面
最終更新日:2020年3月1日
一人一人の人権が尊重されるまちへ DVを見過ごさないために
配偶者やパートナーなど親密な関係にある人からの暴力をドメスティック・バイオレンス(DV(ディーブイ))といいます。
暴力はどのような理由があっても許されるものではなく、犯罪行為であるとともに重大な人権侵害です。
DVは、被害者が悩みを独りで抱え込む傾向があるため、被害が表面化しないことが多くあります。DVの被害者にも加害者にもならないだけでなく、誰もが暴力を見過ごさないために私たちに何ができるのか考えてみましょう。
問い合わせ 男女共同参画課(電話:025-226-1061)
新潟市のDV被害の現状
※令和元年度男女共同参画に関する基礎調査より
配偶者からの暴力
女性の約3人に1人がDVの被害を受けたことがある
男性の約6人に1人がDVの被害を受けたことがある
DVの被害を受けた女性のうち、誰にも相談しなかった人の割合は約4割
DVの被害を受けた男性のうち、誰にも相談しなかった人の割合は約6割
DVのことを相談しなかった理由(上位5つ)
※複数回答含む
- 自分にも悪いところがあると思ったから 27.7パーセント
- 相談しても無駄だと思ったから 26.5パーセント
- 自分さえがまんすれば、なんとかこのままやっていけると思ったから 22.3パーセント
- 恥ずかしくてだれにも言えなかったから 19.3パーセント
- 別れるつもりがなかったから 16.9パーセント
交際相手からの暴力(デートDV)
女性の約6人に1人がデートDVの被害を受けたことがある
男性の約14人に1人がデートDVの被害を受けたことがある
デートDVの被害を受けた女性のうち、誰にも相談しなかった人の割合は約4割
デートDVの被害を受けた男性のうち、誰にも相談しなかった人の割合は約6割
デートDVのことを相談しなかった理由(上位5つ)
※複数回答含む
- 相談しても無駄だと思ったから 26.3パーセント
- ・恥ずかしくてだれにも言えなかったから 25.3パーセント
- ・自分にも悪いところがあると思ったから 21.1パーセント
- ・自分さえがまんすれば、なんとかこのままやっていけると思ったから 17.9パーセント
- ・別れるつもりがなかったから 14.7パーセント
DVを知り、被害から守る
新潟市でDV被害者の相談や支援などの活動を行っている人たちに「DV被害に遭わない」「被害を拡大させない」ために大切なことなどを聞きました。
NPO法人 新潟フェミニスト カウンセリングセンターまど代表(認定フェミニストカウンセラー)
荻野 茂子(おぎの しげこ)さん
アルザにいがた相談室の「こころの相談」の専門相談員として、家族や恋人との悩みやDV、生き方など、さまざまな相談に応じている
殴る・蹴るだけが暴力じゃない
DVは夫婦やパートナー間の暴力で、相手を思い通りに支配することをいいます。DV被害は女性だけでなく、男性にも起こります。殴る、蹴るのほか、外出を制限することなども暴力に当たります。
DVの種類
身体的暴力
殴る、蹴る、物を投げる、髪を引っ張る、首を絞める、ほか
精神的暴力
暴言を吐く、大声で怒鳴る、大事にしている物を壊す、無視する、人前でののしる、ほか
社会的暴力
外出を制限する、行動を監視する、交友関係や電話を監視する、ほか
性的暴力
性行為の強要、避妊に非協力的、無理やりポルノ映像・雑誌を見せる、ほか
経済的暴力
生活費を渡さない、「外で働くな」「仕事を辞めろ」と言う、ほか
子どもを利用した暴力
子どもを危険な目に遭わせる、子どもを盾にして脅す、ほか
逃げないのではなく「逃げられない」
DVには一定のサイクルがあります。加害者はずっと暴力を振るい続けるわけではありません。一旦落ち着いたときに「二度としない」と約束し、別人のように優しくなることもあります。被害者はそれを「愛されている」と錯覚し、「もう一度信じてみよう」と期待して関係を維持します。しかし、暴力がなくなることは珍しく、次第に激化していきます。
被害者は「私にも悪いところがある」と自分を責め、「相手から怒られないためにはどうしたらいいか」ということしか考えられなくなります。そして、次第に「逃げる」という選択肢を思い付くことができない状況に陥ります。
DVが子どもに与える影響
DVは子どもの心や体にさまざまな影響を与えるといわれています。子どもは家庭内のDVに対して敏感です。暴力を目撃していなくても雰囲気で感じとり、家の中で起きていることに不安を抱きおびえます。そして、「DVの原因が自分にあるのではないか」と思うようになります。その一方で、暴力で相手を支配することを学んでしまい、自らも暴力で物事を解決するようになる恐れがあります。
小さなことでも相談を
DV被害を防ぐためには、できるだけ早い段階で対処することが大切です。小さなことでもすぐに相談してください。「家庭のことを他人に相談するべきではない」「こんなことで相談していいのかな」「自分が我慢すれば丸く収まる」などと考え、相談をためらう人がたくさんいます。しかし、家庭内で当たり前だと思っていたことが実はDVだったということはよくあります。
DV被害を受け続けた人は心に大きなトラウマ(心的外傷)を負ってしまい、日常生活にも支障が出ます。一度負った心の傷を癒やすことは簡単ではありません。そういう事態にならないためにも、「ちょっと話を聞いてほしい」程度のものでもいいので気軽に相談してください。
専門の相談員は小さな悩みでも話をしっかりと聞き、相談者に寄り添います。経済的支援などが必要な人への関係機関の紹介なども行っています。
周りの人の理解も大切
DV被害者を守るためには、DVに対する周囲の理解も大切です。家族や友人などからDV被害の相談をされたときは、まずはしっかりと話を聞き、DVの相談窓口や支援団体がたくさんあることを教えてあげてください。
「あなたにも悪いところがあるんじゃないの」といった、DVを容認し被害者を責める言葉は決して言わないでください。
恋人同士でも起こり得る デートDV
NPO法人 女のスペース・にいがた 代表
朝倉 安都子(あつこ)さん
女性のさまざまな悩みなどの相談に応じている。デートDVや交際相手との上手な付き合い方を知ってもらおうと市内の中学校・高校などで講演も行っている
デートDVとは
恋人や交際相手からの暴力をデートDVといい、暴力の種類はDVと同様のものが該当します。デートDVは中学生や高校生の間でも起こっており、「勝手にスマートフォンを見る」「メールの返信が遅いと怒る」など、スマートフォンに関わる暴力が多いことが特徴として挙げられます。「付き合っていたらこれくらい普通だよね」という考えから、それぞれが加害者・被害者であるという認識がないことが多いです。
デートDVを防ぐには
デートDVについて知り、交際相手との対等な関係の築き方を学ぶことが大切です。
良い関係づくりのための三つのポイントは「尊重」「共感」「自己決定」です。「尊重」は、相手の気持ちを大切にすること。「共感」は「同感」とは違い、自分の考えとは違っていても相手の立場で相手のことを理解しようとすること。「自己決定」は、自分のことは自分で決めることです。この三つを意識すると相手と良い関係を築きやすくなると思います。
このことを多くの人が知り、暴力に気付けるようになることが、DVの加害者・被害者を生まない社会の実現につながるのではないでしょうか。
自分が当てはまるかチェックしてみましょう
※一つでも当てはまる人は注意が必要です
DV加害者かも…
- この家のあるじは自分なので、周りは自分の考えに従うべきだ
- 相手が自分の思い通りにならないと、激しい怒りを覚える
- 相手が言うことを聞かないときは、手を上げることもやむを得ない
- 相手の交友関係が気になって仕方がない
DV被害者かも…
- 相手に自分の本音は絶対言えない
- 相手の機嫌を損ねないよう常に気を配っている
- 何をするにも「相手から怒られないか」が意思決定の基準になっている
- 外出先や電話・メールの内容などを執拗(しつよう)に管理される
一人で悩まず相談を
配偶者・恋人・家族からの暴力についての相談を専門の相談員が受け付けます。相談先は別冊情報ひろば3面に掲載しています。
TOPICS トピックス
新潟市は「市民一人ひとりの人権が大切にされるまち」の実現のため、「人権教育・啓発推進計画」を策定し、人権教育・啓発についての各種施策に取り組んでいます。同計画は市政情報室(市役所本館)で閲覧できるほか、市ホームページにも掲載しています。
問い合わせ 広聴相談課(電話:025-226-1016)
関連リンク
PDF形式のファイルを開くには、Adobe Reader(旧Adobe Acrobat Reader)が必要です。
お持ちでない方は、Adobe社から無償でダウンロードできます。
Adobe Acrobat Reader DCのダウンロードへ