市報にいがた 令和2年10月4日 2728号 1面から3面
最終更新日:2020年10月4日
持続可能な農業経営を目指して
新潟市は、水田や畑など豊かな農地を有効活用し、将来にわたって営農の継続を目指す農業者を支援しています。今号では、「大農業都市にいがた」を支える市内の農業者を紹介します。
問い合わせ 農林政策課(電話:025-226-1764)
「元気な農業」を応援し、活力ある新潟市に
新潟市は全国一の水田面積を有し、コメをはじめ、さまざまな農産物が生産される大農業都市として発展してきました。
しかし近年、主食用米の需要減や販売価格の低下、高齢化や後継者不足による担い手の減少など、農業を取り巻く状況は大きく変わりつつあります。この変化に対応すべく、本市では持続可能な農業経営の実現に向けた支援を行っています。
特に、収益性の高い野菜、果樹、花卉(かき)などの園芸作物とコメの複合営農を推進し、産地全体として効率化を図り、経営改善やさらなる規模拡大を目指します。また、主食用米から加工用米や輸出用米などへの転換に取り組み、需要に応じた多様なコメの生産を推進します。
さらに、新規就農までの技術的支援や経済的支援をすることで、将来に向けた意欲ある農業の担い手を確保・育成します。
農業者の皆さんが夢と生きがいを持って農業に取り組めるよう、今後も多様な支援を通じて農業所得の安定・向上に努め、「活力ある拠点都市新潟」の実現につなげてまいります。
新潟市長
農業で自分らしい暮らしを実現
2年前から農業に取り組んでいる髙さん夫妻に、就農のきっかけや農業の魅力について話を聞きました。
髙(たか) 英樹さん・麻子さん(北区在住)
きっかけは「健康的な生活」
就農前は飲食店を経営していた髙さん夫妻。「昼夜逆転の仕事でストレスが多く、健康的な生活をしたいと思っていました」(麻子さん)。休日に趣味を兼ねて店で出す野菜を育てているうちに「農業を仕事にしたい」と考えるようになり、3年前に転職を決意。区役所やJA、県農業普及指導センターなどのサポートを受けて就農準備を進め、平成30年から北区笹山の畑約60アールを借りて野菜の作付けを始めました。
自分が頑張った分結果が出る
現在はナスと長ネギを中心に、小松菜やサツマイモなどを栽培しています。「最初は全てが手探りで、特に技術的な面では不安がありました」(英樹さん)。分からないことはJAや周りの先輩農家に聞きながら農作業に取り組み、徐々に経験を積み、知識を増やしていきました。
収穫した野菜はJAや直売所、スーパーマーケットに出荷しています。「農業は自分が頑張った分が結果に表れやすいと感じます。お店の人から良い評判を聞き、『また持ってきて』と言ってもらえるのが励みになります」(麻子さん)。
お世話になった人に恩返しを
当面は農業経営を安定させるのが目標だという髙さん夫妻。「JAの部会で情報収集したり自分でも勉強したりして、栽培技術を確立させたいです。お世話になっている皆さんに恩返しできるようになりたい」(英樹さん)。「夏の収穫時期などは忙しくて大変なこともありますが、太陽の下で自分らしい暮らしができています。冬の農閑期に二人で温泉に行くのが楽しみです」(麻子さん)。お二人ともすてきな笑顔で語ってくれました。
ナスや長ネギなど複数品目の野菜を栽培し、年間を通じて出荷
農業、やってみませんか? 就農までの道筋
農業を始めるには、一般的に約1年から3年の準備期間が必要です。
1 まずは体験してみよう「農業サポーター」
市内の農家で農作業などのボランティアを受け入れています。園芸や野菜作りを学びたい、農家の生の声を聞いてみたいという人はぜひ参加してみてください。
問い合わせ 食と花の推進課(電話:025-226-1844)
2 興味を持ったら相談・情報収集
市では研修先や補助制度などの相談、情報提供を行っています。就農のイメージを膨らませましょう。
問い合わせ アグリパーク(南区東笠巻新田 電話:025-378-3109)
区役所農政担当課(東区・中央区は江南区役所産業振興課)
農業体験研修
県内の受け入れ農家で農業体験や技術習得のための研修を実施しています。
問い合わせ 県新規就農相談センター(中央区新光町 電話:025-281-3480)
3 就農の意志を決定
農業で生計を立てる意志を固め、就農の形態(自営または農業法人などへの就職)を決めましょう。家庭内でよく話し合い、家族の理解を得ることも大切です。
自営就農の場合と雇用就農の場合で就農(営農開始)までの過程が異なります。
自営就農の場合
4 事前準備
区役所や農業委員会、JAなどと相談しながら進めます。
- 就農地の選定
- 住居の確保
- 自己資金の準備
ほか
5 就農計画の作成
計画が認定されると、国・県・市からの補助金や無利子貸し付けなどの申請ができます。
- 栽培する作物、方法、規模
- 目指す農業所得、収支計画
- 必要な施設
ほか
6 農地の確保、施設・機械の取得
農地の取得や借り入れには農業委員会での手続きが必要です。
就農(営農開始)
雇用就農の場合
4 就職先を探す
県新規就農相談センターやハローワーク新潟(中央区美咲町 電話:025-280-8609)で農業法人などの求人情報を提供しています。
就農(営農開始)
共同利用施設を活用し生産者の負担を軽減
大規模な共同利用施設を導入することによって生産者を支援する取り組みを紹介します。
作付面積倍増を目指し えだまめ選果施設を導入
JA新潟みらい
園芸畜産販売課
課長
吉田 忠裕さん
7月10日に中原市長が同施設を視察。最終選別の手作業を体験
当施設は、南区白根地区の特産品であるえだまめの生産拡大を目指し、平成30年から建設に向けた検討、整備を進めてきました。今年3月に完成を迎え、6月から稼働しています。
白根地区では、生産者の高齢化や担い手不足が原因でえだまめの出荷量が伸び悩んでいました。そこで、これまで生産者が個々に行っていた選別、洗浄、脱水、包装の作業工程を集約して機械化・自動化することにより、負担の軽減を図りました。虫食いや病気のさやはセンサーで自動的に取り除かれ、粒の大きさがそろった状態で包装が完了するなど、1時間当たり約1トンのえだまめを処理することができます。また、併せて導入した収穫機を生産者へ貸し出し、作業のさらなる機械化を進めています。
生産者の労働力を作物の生育管理や収穫に集中させた結果、今年の作付面積は昨年の約1.6倍に拡大、来年は倍増を目指しています。収益性の高いえだまめの出荷を支援することで、生産者の農業所得向上に貢献していきたいと考えています。
米作による収益確保へ 乾燥調製・精米施設を整備
有限会社
アグリ新潟
代表取締役
平野 潤一さん
乾燥調製施設内部の様子。搬入から乾燥、包装までが自動化されている
当社は国内の主食用米需要の減少傾向を受け、作業受託による大規模化や消費者への直接販売、他の農業法人と連携したコメの輸出など、米作による収益の確保に取り組んできました。その一環として、コメの乾燥調製・精米工程の大規模化・集約化による生産コストの低減を目指し、昨年から施設の建設に着手。今年8月に竣工し、この秋から稼働を始めています。
乾燥調製施設は1日に最大約33トンの処理が可能です。精米施設はコメの輸出に必須の衛生基準「HACCP(ハサップ)」に対応しています。当社で生産したコメだけでなく、近隣の農家からの搬入も受け付けています。当施設を活用してもらうことで個々の農家が生育管理や生産規模拡大に注力できるようになり、地域全体のコメの品質向上や経営改善につながると考えています。
今後も消費者のニーズに合った安心・安全なコメ作りに取り組み、地域農業の発展に貢献していきたいです。新潟の宝である水田を大切にして、周囲から信頼される農業者でありたいと思っています。
BSN広報テレビ 儲(もう)かる農業を目指して ~大農業都市 新潟市の挑戦~
全国に誇れる農産品を数多く有する大農業都市、新潟。その特性や魅力を今後も高めていくために、法人化による大規模化や収益性の高い園芸作物の導入、多様な販路の確保など、「儲かる農業」の実現に向けた取り組みを紹介します。 ※手話通訳付き
放送日時 10月10日(土曜)午後4時半から同45分
問い合わせ 広報課(電話:025-226-2111)
江南区の若手梨生産者グループ「AGNET(アグネット)新潟」の皆さん
編集後記~取材を終えて
個々の農家による手作業主体の農業から転換し、共同利用施設を導入して生産性の向上に取り組んでいる人たちがいることを知り、農業への見方が変わりました。
髙さん夫妻のように農業に魅力を感じて新たに就農する若い人が増え、将来も農業が新潟のシンボルとして存在し続けることを願っています。
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