(6-9)国民健康保険料の誤った説明により不利益を被った
最終更新日:2024年10月30日
(6-9)国民健康保険料の誤った説明により不利益を被った
令和6年7月23日 苦情申立書受理
申立ての趣旨(要約)
令和6年3月8日A区役所にて、令和6年度の国民健康保険料の試算をお願いし担当職員から試算表を作成してもらった。その試算表によれば、年間保険料が20,900円と記載されているが、7月に届いた国民健康保険料納入通知書兼決定通知書では、年間保険料が209,700円と、試算の10倍の額であった。
国民健康保険料の試算を依頼した目的は、4月末に退職する予定の会社の社会保険を任意継続とするか国保に加入するかの判断をするためであり、試算の金額を判断材料として国民健康保険に加入したものである。ところが、試算の約10倍の保険料で決定した旨の通知が突然届き、納得のいくものではない。
また、決定通知書が届いた後に、A区役所にて試算額と決定額の相違について説明を求めたが、試算の相談時に適正な情報を提供いただけなかった可能性があるなど、あたかもこちらに非があるような発言をされたことに怒りしかない。その後、試算時に必要な情報は提供されていたことを示す資料があった旨の連絡があり、当初からミスを隠蔽しようとしていたかのようで不信感しかない。
所管部署
A区国民健康保険料担当課(以下「所管課」という。)
調査の結果の要旨
令和6年10月28日決定
申立人の主張及び所管課の説明と双方から提出のあった資料に基づき、当審査会では以下のとおり判断し調査結果とします。
第1 事実関係の概要(すべて令和6年)
(1) 3月5日、申立人が所管課の窓口へ相談のため訪問。申立人は会社員であるが、病気休職のため昨年(令和5年)は働いておらず、社会保険の任意継続加入との比較検討のため令和6年度の国民健康保険料の試算を希望した。所管課の対応記録では、「R5はほとんど働いていなかった。給与収入30,000円。ほかに、株式等を売却した収入が通帳に入った額で160万前後あるそうだが、申告するかどうか思案中とのこと。ただ、具体的に何の名目で幾らのものがあるかは把握していないとのことなので、確定申告書を用意いただければ、その分を反映させた試算も可能であると説明。とりあえず30,000円の給与収入をもとに試算:20,900円/年」と対応を記録した。
(2) 3月8日、申立人が所管課へ来所。申立人の相談内容から職員が令和6年度の国民健康保険料を試算し、「国民健康保険料の試算について」と題する試算表を交付した。同試算表には手書きで「申告しなかった場合の国民健康保険、R6年度保険料(収入給与:3万円)20,900円/年、1,741円/月」との記載があり、同試算表の右上には同じく手書きで「申告した場合も同じ金額」との記載が試算に対応した職員によりなされている。なお、当時の所管課の対応記録によれば、「配当所得を申告した場合の保険料の試算依頼。→給与30,000円、配当所得:123,335円。仮計算:20,900円、1か月あたり:1,741円、期別:2,322円と伝える。配当を申告しても保険料は変わらないのですかと問われる。基礎控除43万円を引くと所得割がないためと説明。医療費の限度額について確認希望、給付係を案内。」と記録されているとのことである。
(3) 7月18日、申立人の下に令和6年度国民健康保険料納入通知書兼決定通知書(令和6年7月16日付け)が郵送され、同通知書の年間保険料額は209,700円であった。
同日夕方、申立人が同通知書、上記試算表、確定申告書控えを持参して所管課に来所し、3月8日の試算額と決定保険料額が大きく違うと訴える。所管課の職員は3月8日の記録を確認して対応するも開庁時間外であったため、明日に改めることになった。なお3月8日に上記試算をした職員は既に退庁していた。
(4) 7月19日、所管課内で国民健康保険料の試算時に入力する国民健康保険税(料)賦課額試算確認票の申立人の情報が残っていないか調べたが、4月以降のものしか残っていなかった。
同日夕方、申立人が所管課に来所した際、所管課が申立人に、3月8日の対応記録では確定申告書の持参はなく本人の申し出により給与収入と配当所得を基に試算していること、申立人に交付した試算表にも給与収入と配当所得しか記載しておらず上場株式等譲渡所得を聞き取りしていたことを確認できないと説明した。申立人は、3月8日の試算時に、確かに確定申告書を見せた、試算表に給与収入と配当所得しか記載がなくても確定申告書を見せたのだからそちらの見落としである旨主張した。途中から課長補佐が同席し、国民健康保険料は下げられないことを伝え、分割納付を提案したが、「分割納付しても保険料が下がらない。差額の補償をしてほしい」と訴えた。
(5) 7月22日、所管課内で、試算に対応した職員個人のノートに備忘録を残していないか改めて確認したところ、3月8日の対応職員のノートが存在し、同ノートには「まだ提出していない確申(控)持参」との記載があることを発見したことから、所管課長が申立人に架電し、3月8日に確定申告書の提示がなかったと回答したが、当日対応した職員のノートに「まだ、提出していない確申(控)持参」とのメモがあったことを伝え、謝罪した。
第2 当審査会の判断
1 申立人の苦情内容は、国民健康保険料の試算を依頼した目的は、4月末に退職する予定の会社の社会保険を任意継続とするか国保に加入するかの判断をするためであり、試算の金額を判断材料として国民健康保険に加入したものである。ところが、試算の約10倍の保険料で決定した旨の通知が突然届き、納得のいくものではないというものです。
この点、所管課からは、当時の確定申告書の写しを保有していないため断言はできないが、試算時に上場株式等譲渡所得を見落とした可能性が否定できないと回答がありました。
当審査会としても、本件では所管課が試算時に申立人の上場株式等譲渡所得を見落とし、その結果、試算時に比べて約10倍の保険料決定に基づく通知がなされたものと考えます。本件試算は、申立人にとって、退職後に社会保険を任意継続するか国保に加入するかの判断をするための重要な要素であり、そのため、所管課としては申立人の所得等情報を正確に把握し、出来る限り正確な試算をすることが必要であったと考えます。本件では所管課が申立人の上場株式等譲渡所得を見落としたこと自体に不注意があったものですが、このような見落としは常に発生する可能性がありますので、出来る限り、見落としを防ぐ取組みが必要と考えます。具体的には、統一したマニュアルの策定や研修会の実施等によって知識や経験を課内で共有すること、試算時にはダブルチェックをすること、資料の写しをとって保管すること等の対応が求められるものと考えます。
2 また、申立人は、決定通知書が届いた後、A区役所にて試算額と決定額の相違について説明を求めたが、あたかも申立人に非があるような発言をされた。そして、その後、試算時に必要な情報は提供されていたことを示す資料があった旨の連絡があり、当初からミスを隠蔽しようとしていたかのようで不信感しかないと苦情を述べています。
この点、所管課は、約4か月前のことであり、試算対応職員に当時の記憶はなかった。相談対応した職員が対応記録を基に説明することは基本ですが、こちらの記録に誤りはなく、これまでにもあった例のように、先方の記憶違いだという思い込みで対応していた可能性があり、そのことの危険性を痛感した。なお、7月25日に申立人と面談し、申立人の申出のとおり確定申告書の提示があったことを確認したことを伝え、謝罪したということです。
当審査会としても、本件では職員のノートが現存したため事実が明らかとなりましたが、もしこれが残っていなければ、問題の本質が埋没してしまっていた可能性もあります。所管課においては試算時に相談者が持参した資料の写しを保管するなどして、後日、水掛け論にならないような対応が求められるところです。
以上、当審査会は、新潟市行政苦情審査会規則第16条1項に基づき、下記のとおり運営の是正等を求め意見を表明します。
(1) 意見の趣旨
市民の要請に基づく国民健康保険料の試算について、本件のような誤りが発生しないための方策を検討し、実行していただきたい。
(2) 意見の内容
国民健康保険料の試算は、申立人のように退職後の社会保険を任意継続とするか国民健康保険に加入するかの判断において重大な関心事であり、今後、本件のような上場株式等譲渡所得等、国保料を算定する上で必要な所得の見落としなどの誤りを出来る限り防止する対策が必要であると考えられます。他の区においても同様の問題が生じる可能性を否定できないところ、現在はそれぞれの区でマニュアルを整備して研修等を行っているとのことですが、本市の国保制度を所管する保険年金課が主体となり、全区共通のマニュアルの策定や研修等による必要な知識の習得、本件のような「好ましくない事例」の共有を図るとともに、試算時のダブルチェック、持参資料の写しの取得、保管等の方策を検討し、実行していただきたいと考えます。
※審査会からの意見に対する市の是正等の方針は、市から報告があり次第、掲載します。
このページの作成担当
〒951-8550 新潟市中央区学校町通1番町602番地1(市役所本館1階)
電話:025-226-2094 FAX:025-223-8775