(28-1-8)市の道路改良事業に係る書類の不正転写の是正と再発防止について
最終更新日:2017年2月13日
(28-1-8)市の道路改良事業に係る書類の不正転写の是正と再発防止について
平成29年1月12日 苦情申立受理
申立ての趣旨
市の道路改良事業に係る用地測量の関係書類に署名押印したが、他の書類に不正転写されたため、市は正当な書類を作成し、新たに署名押印を求めるとともに、不正の再発防止策を講じてほしい。
申立ての理由
申立人は、市の道路改良事業に伴う用地取得に際し、市が取得を予定している土地と申立人所有の土地の境界確認のため、隣接者として、平成28年8月30日にA区建設課(以下「所管課」という。)が作成した用地平面図及び土地境界立会確認書(3通)に署名押印した。
しかしながら、その後、既に上記の書類の確認を終えている、市が取得を予定している土地の所有者及びその隣接地の土地所有者(以下「確認者」という。)に無断で別途作成された書類に確認者の署名押印が次のように不正に転写されていることが判明した。
すなわち、用地平面図については、図面の余白上下に「土地境界立会確認書」の文言及び「説明文」が加筆されているとともに、確認者の署名押印欄が上下に分割され、申立人の署名押印欄が右上部から右下部へ転写されている。
また、土地境界立会確認書(3通)については、文書名や説明文が加筆されるなどしており、当初申立人が署名押印した際のものとは、書式・内容のすべてが相違している。さらに、当初申立人は、申立人と土地の名義人との関係を示す「子」の文字を同書類に記載していたがそれがなく、確認者の署名押印も不正転写されている。
市は、この不正事実を認めて正当な書類を作成し、確認者に説明の上、改めて署名押印を求めるべきである。
また、所管課とのこれまでのやり取りの中で、申立人は所管課に対して強い不信感を抱くに至った。
まず、平成28年6月に、誤った隣地との土地境界線を表記した図面を委託業者が持参したため、申立人がこれを指摘したところ、現地で杭を確認して、改めて同年7月に訂正した図面を持参した。しかし、その図面の3箇所に確認作業範囲外の境界線を意図的に表記していたので、さらに所管課へ文書で削除を要請した。
また、所管課は、同年8月26日付けの、用地測量についてのお知らせという課長発の公文書に、本来は前述した用地平面図の写しを添付すべきところ、意図的にこれと異なる用地実測図の写しが添付されており、署名押印した30日には事前に何の説明もなかった。そして、これら2種類の図面についての説明が所管課において二転三転した。
さらに、用地平面図及び土地境界立会確認書の署名押印について、申立人が行った個人情報開示請求の一部開示決定通知において事実と異なるものが開示され、この市長名による開示までも信じられないものであった。
これらのことから、今後法務局へ書類を提出する際に、所管課が図面の差替え等を行うことが危惧されるため、申立人が不利益を受けないよう、監視機能の強化等、不正の再発防止策を求める。
所管部署
A区建設課
調査の結果
平成29年2月9日 決定
申立てに関する書類(用地平面図及び土地境界立会確認書)の作成について所管課に非は認められない。
調査結果の理由
当審査会で、所管課から関係資料を提出してもらい、事情を聴取した結果、以下の事実が認められた。
平成28年6月に委託業者が持参した図面に表記されていた地番〇〇〇〇‐〇との境界線には誤りがある旨を申立人が指摘した。そこで委託業者が現地を再調査したところ埋没杭が発見され、隣接者の確認を得て、当該境界線を訂正した図面が改めて作成された。
平成28年8月26日、所管課では、申立人に対し、隣接者の確認・承諾を得て図面を修正した旨を公文書で通知することとし、申立人に分かりやすいようにとの配慮から、寸法の入った用地実測図を付記し、そこに確認作業範囲外の境界線も表記し、これが「最終図面」であると記載した。
平成28年8月30日、申立人は「用地平面図」「土地境界立会確認書」に署名押印した。
その後、申立人は、「最終図面」だとされた「用地実測図」と署名押印した「用地平面図」とが異なることを指摘し、確認作業範囲外の境界線について削除を要請した。
所管課では申立人の要請に応じて確認作業範囲外の境界線を削除したが、申立人は所管課に対して不信感を抱くようになった。
この点、「最終図面」だとして記載された図面(用地実測図)と署名押印した図面(用地平面図)とは、厳密には同一の図面ではないのであるから、申立人が不信に思ったのも理解できる。
所管課では、申立人に対して、境界確認の手続きにおいて不信感や不安な思いをおかけして、大変申し訳なかったと謝罪の意向を示したが、申立人の理解を得ることはできなかった。
また、申立人は、本件申立ての趣旨として書類が不正に転写された旨を主張しているので、当審査会で、この点について所管課から関係資料を提示してもらい、原本を確認した。
その結果、用地平面図については、申立人が主張している「文言・説明文の加筆」「署名押印が不正に転写されている」との事実を認めるには至らなかった。
土地境界立会確認書についても、申立人が主張している「文書名・説明文の加筆」「署名押印が不正に転写されている」との事実を認めるには至らなかった。
また、申立人に開示された資料については、原本の写しと認められた。
以上のとおり、申立人指摘の文書について不正を確認することはできなかった。
経緯を確認すると、申立人が所管課に対して不信感を抱いた心情は理解できるが、用地実測図も用地平面図も「市道〇〇線用地測量」事業において作成された図面であり、寸法等の記載の有無に差はあるものの、内容に基本的な相違はなく、所管課が申立人に実測図を送付したことについては特段の害意等の意図で行ったものとは認められなかった。
しかしながら、土地は重要な私有財産であり、その境界は所有者にとって重大な問題であることから、所管課においては、土地の境界に関わる業務については、より慎重かつ丁寧な対応を心掛けてもらいたい。
以上、調査結果のとおり判断する。
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