(4-4)居宅介護事業者に対する地域保健福祉センターの対応
最終更新日:2022年10月17日
(4-4)居宅介護事業者に対する地域保健福祉センターの対応
令和4年7月6日苦情申立書受理
申立ての趣旨
1.ご家族がそのご子息(障がい者)に対し、虐待と認定されかねない言動が継続されています。ご家族の精神状態、ご子息の生命の危機にあることを行政として認識していながら、対応をいただけていない。
2.ご子息の支援を担当している居宅介護従事者に対し、ご家族は法的に認められない医療行為を強要。従事者は医療行為ができない旨をご家族に伝えるも、ハラスメント行為により、違法行為を強要することを繰り返している。これらのご家族の言動を行政は認識されているにも関わらず、改善されるような対応をしていただけない。
3.障がい福祉サービスは、相談支援事業所が作成した計画に基づいて居宅介護事業所が作成した個別支援計画により、実際の支援が行われるが、支援計画にない特例的な支援をご家族から強要される。その支援がご利用者にとって必ずしも必要なものなのか疑問を感じるようなことについても、ご家族の判断で強引に事業所に強要される。行政はその状況を把握しながら、改善を促すような対応をしていない。
4.居宅介護従事者の精神的な負担を鑑み、ご利用者と事業所との契約解除をせざるを得ない状況にあり、事業所としては何らかの形でご子息の生命維持のための保護を行政には依頼しているが、事業所の支援が解除された後にご子息の生命をどのように守るのか具体的な方法が行政からは明確に提示されない。
※上記のような状況を踏まえまして、居宅介護事業所との契約が解除される以上は、在宅でのご子息の生活は困難であることを行政にはご認識いただき、また、虐待であることを認定いただき、生命を優先する為には施設等で保護をするしか選択肢がないことを早急にご判断いただくことを当方としては繰り返し求めるも、何ら対応いただけず、当方からの要望や問い合わせに対しても、随時・即時に対応いただけていないことに対し、苦情を申し立てる。
申立ての理由
当社は、新潟市より認可をいただき居宅介護事業を運営しております。支援を担当しているご利用者のご家族より、居宅介護従事者に対し、繰り返し医療行為を強要していることが判明しました。
令和4年4月○日に、他事業所がご子息の支援に入った際の報告書が関係する機関に回覧され、ご子息のひっ迫されている状況が初めて確認されました。同4月○日に開催された担当者会議にて、A地域保健福祉センターに行政としての対応を各事業所から相談していましたが、何ら改善することなく2か月以上が経過しています。ご家族はセンターとの面談に応じる様子が無く、課題解決に至らないまま時間だけが過ぎている状況です。
ご子息は、頻繁に緊急事態に陥ることがあり、医療行為とされるカフアシストやバギングなど本来従事者が対応できないことを、その都度ご家族から従事者に高圧的に求められています。
過去、緊急事態の際、居宅介護従事者が別室にいるご家族を呼んだ時には、医療行為はご家族自身で対応することが可能で、別室にご家族がいるにもかかわらず、従事者に対し本来できない行為をハラスメントまがいの方法で強要しました。当方の居宅介護従事者に対し「私を呼ぶのではなく、最初に看護さんに連絡して」等といった不満を言うような状況にあります。また、ご家族は「(ご子息を)殺したらいい」といったような発言もされているようです。これは明確に虐待行為にあたるように推察されます。
そのため、新潟市としてどのように対応されるのか、A地域保健福祉センターや障がい福祉課にもご相談しましたが、明確な保護方針や対応方法が提示されません。
7月○日に当社は支援に関わる契約を解除しますが、他の居宅介護事業所も契約解除を予定していると思われます。このままでは、ご利用者の生命に危険が生じることが想像できます。
窓口であるA地域保健福祉センターに対しては、日々ご家族への対応についての要望を上げ情報共有を求めておりますが、即時の対応が一切なされていない状況が続いています。果たしてご子息への生命の危機感を持たれているのか、課題が何ら解決しないことをそのままにしている様子を見ますと、行政の対応としては、大いに疑問を感じてしまいます。
所管部署
A区健康福祉課(A地域保健福祉センター)(以下「所管課」という。)
調査の結果
令和4年10月7日決定
所管課の対応に非があるとは認められない。
調査結果の理由
当審査会では、所管課から資料を提出してもらうとともに、申立人及び所管課から聞き取りを行いました。
資料の確認及び聞取りの結果、以下のような事項が認められました。
(1)居宅介護事業者である申立人が、問題を指摘する家族(以下「本件家族」という。)の子息(障がい者)は未成年者で、高度の支援・ケアを要する状況にあり、申立人の他、複数の事業者が支援にあたっている。
(2)所管課は、本件家族について、従前から、各種支援等をするに際して各種配慮等をすることが望ましい家族であると認識していた。もっとも、令和4年3月までは、申立人が指摘するような問題(以下「本件問題」という。)は生じていなかった。(少なくとも、所管課はそのような問題が発生していることを認識していなかった。)
(3)所管課は、令和4年4月○日の支援時に関する事業所(申立人以外の事業所)作成の報告書を受け取ったことにより、同月○日に本件問題を認知し、同月○日に関係者会議を開催した。会議後、児童相談所にも状況を報告した。
(4)所管課は、上記会議後、本件家族の母及び父との面談を試み、父が在宅している平日夜間や日曜日に合計4回の家庭訪問を行ったが、いずれも面談を拒否された。そこで、本年6月、児童相談所の担当者からも同行してもらって2回、所管課の担当者のみで2回、合計4回の家庭訪問を行ったが、やはり面談を拒否された。
(5)他方、母はメールでのやり取りを希望していたことから、所管課では、やむなく、面談に代えてメールで母とやり取りを行っていた。このメールでのやり取りの中で、所管課は母に対し、ヘルパーは医療行為ができないこととその根拠等を伝えている。また、母に対し、「ヘルパーへの不適切な行為(申立人が主張している行為)があったのであれば、そのような発言や行動はしないように」との趣旨を伝えたこともある。
(6)申立人は、令和4年7月○日に本件家族との契約を解除した。加えて、ヘルパーを派遣していた他の介護事業所も同月○日に契約を解除した。そのため、本件家族に関しては、訪問看護、訪問入浴、訪問リハビリのサービスのみが提供されている状況にある。
(7)上記の状況を踏まえ、所管課として子息の一時保護の要否等について児童相談所と相談し、一時保護を実施することになった場合の入所先となる病院又は施設を探している。但し、所管課からの聞き取りを行った時点では、適切な設備・体制等が備わっており、且つ、直ちに入所可能な病院又は施設は見つかっていない。
(8)所管課としては、本件家族に関しては配慮すべき多くの課題があり、どのように対応すべきかを速やかに判断することは困難であって、関係者に具体的な対応策を提示することができない状況にあると考えている。また、申立ての趣旨3に関しては、所管課から次の趣旨の説明がなされた。
(ア)申立人に確認したところ「支援計画にない特例的な支援」とは移動支援のことを指すとのことである。したがって、申立人の指摘は、「移動支援が週間計画に記載されていない」との趣旨であると考える。
(イ)一般論として、移動支援や通院等介助は不定期に利用する利用者も多いため、サービス等利用計画には記載するが、週間計画には記載しない場合がある。本件家族の計画書も同様であった。
(ウ)具体的には、本件家族は、火曜日および金曜日の午前中に、子息の体調・天候などの条件が良い場合には、散歩、ドライブ等の外出のため、移動支援等のサービスの利用を希望していた。外出できるか否かが、体調・天候に左右されるため、本件家族は当日の状況に応じて、移動支援か身体介護のどちらかのサービスが利用できるようにと希望しており、この結果、週間計画には移動支援が記載されなかった。
(エ)なお、子息は、自身の意思を的確に伝えることが困難であるため、外出するか否か等について、父母が子息にとって何が望ましいかを考えて決定することもあると考える。
(オ)結論として、週間計画を作成する相談支援専門員が申立人に本件家族の希望・ニーズを正確に伝えることができていなかったことが、申立ての趣旨3のような申立てがされることになった要因と考えられる。そこで、所管課は、改善を図るよう相談支援専門員へ伝えた。
ところで、一般論として、未成年者や障がい者の虐待が疑われる場合であっても、行政として安易に強制的な措置を取るべきでないことは当然です。措置を受ける側が強制的に大きな制約を受けることになる以上、強制的な措置をとる前提として慎重な判断が求められると考えます。
また、支援を要する未成年者・障がい者の将来的な福祉を考えた場合、本人、監護者、支援者、行政担当者らが円満な関係を維持しつつ支援にあたることが望ましいことは言うまでもありません。そのため、支援者、行政担当者らは、監護者との信頼関係を崩すことがないように配慮することも求められると考えます。
このような点を考慮したうえで、上記(3)~(7)の事情に鑑みると、申立ての趣旨1、2に記載されている事項に関しては、所管課は適切な対応をしていると考えます。また、申立ての趣旨4に関しては、上記(8)記載の所管課の見解が相当であると考えます。
加えて、申立ての趣旨3に関しては、所管課は上記(ア)から(オ)の趣旨を説明しているところ、その内容に不合理な点はありません。また、その他に、所管課が不適切な対応をしている、もしくは対応をせずに放置しているというようなことを裏付ける事情は認められません。
よって、当審査会としては、所管課の対応に非があるとは言えないと判断します。
しかしながら、本件家族におかれては、全ての介護事業者が介護支援に係る契約を解除するという異常事態とも言える状況にあります。
所管課におかれましては、本件家族への支援が適切に提供されるよう、引続き丁寧な関与を行っていただきたいと思います。
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