(4-8)介護認定調査における様々な不備

最終更新日:2022年11月28日

(4-8)介護認定調査における様々な不備

令和4年8月29日苦情申立書受理

申立ての趣旨

介護認定調査における様々な不備

申立ての理由(要約)

私は、おばの介護認定申請を4月○日に行い、同日、介護保険暫定被保険者証の交付を受けました。5月初旬に機器のレンタル契約などを行いましたが、被保険者であるおばが6月○日に亡くなったことで、6月○日に包括支援センターから、「認定調査が終わっていないため、介護保険サービスは受けられない。介護申請を取り下げてほしい」と連絡があり、契約をしていた機器のレンタルなどの費用が全額負担となりました。認定調査を速やかに進めていれば、このようなことにならなかったと思い、以下のことを問題点として苦情を申し立てます。
1.介護認定の着手に時間がかかりすぎる。
2.認定調査の前に、調査のスケジュールや、「被保険者の死亡のリスク」(重要事項と思われる)などについて説明がない。
3.認定前の「被保険者の死亡」の場合の介護サービス利用について、市民に周知されていない。

所管部署

福祉部介護保険課(以下「所管課」という。)

調査の結果

令和4年11月21日決定
所管課の対応に非があるとは認められない。

調査結果の理由

当審査会では、所管課及び申立人から資料を提出してもらうとともに、聞き取りを行いました。資料の確認及び聞き取りの結果、以下のような事項が認められました。
1.介護保険サービスに関する制度と運用について
(1)介護保険サービスを利用する場合の手順等について
介護保険サービスを利用しようとする場合には、次のステップを踏むこととなる。
(ア)要介護(要支援)認定申請をする。
(イ)調査員が、対象者に対し認定調査を実施し、加えて、主治医に対し意見書の作成を依頼のうえ回収する。
(ウ)認定調査の結果と主治医意見書の内容に基づき、介護認定審査会が介護度を決定する。
(エ)決定された介護度に基づいてケアマネージャーがケアプランを作成する。
(2)介護保険サービスの暫定利用について
(ア)上記(ウ)で介護度が決まると、申請日に遡って介護保険サービスが適用される。そのため、上記の(イ)(ウ)を後回しにして(エ)に進み、暫定でケアプランを作成しサービスを利用することも可能である。この場合には、対象者の要介護度がどの程度になるか予想を立てて、暫定のケアプランを作成しサービスの提供を受けることになる。
以上の方法で介護保険サービスの提供を受けることは「暫定利用」と呼ばれる。
(イ)暫定利用したものの、要介護度の予想が外れて予想よりも軽い介護度と判断された場合や、本人の容態が急変して認定調査実施前に亡くなり介護度の決定をすることができない場合等には、暫定利用で利用した介護サービスの全部または一部について介護保険が適用されず、利用者は利用料金の全額を負担することになる。
(3)要介護度認定手続のスケジュール等について
(ア)介護保険法第27条第11項では「申請に対する処分は、当該申請のあった日から三十日以内にしなければならない。ただし、当該申請に係る被保険者の心身の状況の調査に日時を要する等特別な理由がある場合には、当該申請のあった日から三十日以内に、当該被保険者に対し、当該申請に対する処分をするためになお要する期間及びその理由を通知し、これを延期することができる。」と規定されている。
(イ)新潟市では、申請数の増加に伴い、30日以内の被保険者本人への通知が難しくなっている現状にある。そのため、介護保険法第27条第11項但書きの規定を根拠に30日を超える旨について、被保険者に通知している状況にある。
申請から決定までに要する日数は、令和2年度が平均38.8日、令和3年度が平均36.7日であり、政令指定都市全体の平均は令和3年度で36.4日となっている。
(ウ)新規の要介護認定申請がなされた場合の認定調査の日程については、原則として、調査センターの調査員が、申請日順に調査の立会人のアポイントメントを取り、立会人の都合や、入院中の場合には病院の受入れ可否を踏まえて決定している。
令和4年4月は、申請から認定調査実施日まで平均して25日程度を要している。
(エ)なお、例外として末期がん患者で介護サービスの利用について急を要するとの申し出が申請時または申請後にあった場合には、申請受付窓口(地域包括支援センターや居宅介護支援事業所等)はその旨を速やかに調査センターへ連絡し、調査センターは連絡を受けてから1週間以内の調査実施に努めている。
(4)暫定利用の際の費用の公費負担について
(ア)申立人は、暫定利用に係る費用のうち本人が認定調査実施前に亡くなった場合に発生する料金(以下「暫定利用料金」という。)については自治体が負担すべきと考えている。その理由は次のとおりである。
(A)本人の状態が急激に悪化し死亡に至った場合には、暫定利用料金が全額自己負担となる可能性について事前に説明を受けたとしても介護サービスの暫定利用をせざるを得ない。他方で、要介護認定手続をどれだけ速やかに行ったとしても、調査実施前に本人が亡くなる可能性をゼロにすることはできない。
(B)このような場合、本人には落度がないにも拘わらず、それまで介護保険料を支払ってきた本人に費用全額を負担させることは妥当ではなく、公費で負担すべきである。
(イ)この点に関し、暫定利用料金のうち保険給付相当額を被保険者に対し独自の制度により支給している自治体も存する。(政令指定都市では静岡市、大阪市、神戸市)
しかし、所管課としては上記公費負担の問題は全国共通の課題であって、国において対応すべきと考えている。したがって、独自の支給等は行っていない。但し、介護保険制度の拡充や他の制度による支援を検討するよう、他の政令市とともに国に要望している。
2.本件における事実経過等について
(1)申立人のおば(以下「A」という。)は、従前は介護サービスを受けることなく一人で暮らしていたところ、令和4年4月上旬ころから体調を崩し、同月○日、かかりつけ医の医師から要介護認定の申請等をするよう指示された。
(2)申立人は比較的近隣に居住しており、従前よりAと交流があったことから、同月○日、地域包括支援センターに電話で相談し、同日、Aの要介護認定を申請した。また、申請の際、暫定利用を希望した。この時、調査のスケジュールや被保険者の死亡などにより認定調査を行えず、介護度の判定ができなかった場合の暫定利用料金の負担に関する説明はなかった。
(3)同年5月○日、暫定利用の内容が決まり、利用を開始した。
(4)同月○日、医師の紹介によりAがB病院に入院した。
(5)同月○日、関係者の日程調整の結果、同月○日に認定調査を実施することを決定した。
(6)同月○日、B病院でコロナ感染者が発生したため、病院側から調査日の延期について要請があった。
(7)同月○日、再度の日程調整の結果、認定調査を6月○日に延期することを決定した。
(8)同月○日、B病院から申立人らに対し、Aは腹部に何らかの悪性腫瘍が疑われ、ステージ4、予後1~2ヶ月との説明がなされた。
(9)同年6月○日、Aが亡くなられた。認定調査を受ける前に亡くなられたため、介護度を決定することができず、暫定利用をしていたサービスは介護保険を使用できないこととなった。これにより、暫定利用に要した料金は全額自己負担となることが確定した。

以上を前提とすると、当審査会としては次のとおりに考えます。
3.介護認定に要する日数について
所管課は、Aについて要介護認定申請の24日後に認定調査を実施することを予定する等しており、介護保険法第27条第11項の規定に沿った運用を行っています。
且つ、本件については、申請時にはAが末期がん患者であることは判明していませんでした。
すなわち、所管課はAの介護認定の手続に関して法の規定に合致する取扱いをしており、非があるとは認められません。
4.要介護認定申請時における調査スケジュール及び被保険者の死亡などにより認定調査を行えず、介護度の判定ができなかった場合の暫定利用料金の負担に関する説明について
上記説明をすべきか否か、また、誰がすべきかに関して、特段、規定等は見受けられません。しかしながら、少なくとも説明されることが望ましいことは当然と考えられます。
他方、要介護認定申請は、市以外の各種窓口に対して行われることも多いため、説明をする主体は各窓口であるケアマネージャー等とならざるを得ません。
この点、本件の要介護認定申請は市に対して行われていないことから、本件における上記説明の主体は市ではありません。よって、本件で上記説明がなされなかったとしても、所管課に非があるとは言えません。
なお、所管課としても上記説明がなされるべきと認識しており、所管課が主催する各種研修会等において引き続き注意喚起等を行うとのことでしたので、この点、付言します。
ちなみに、新潟市では、要介護認定申請がされた場合、新潟市の委託を受けた認定調査センターの担当者が認定調査を実施します。そのため、認定調査センターが上記の説明をすることも考えられます。しかしながら、認定調査センターの担当者が申請者等と連絡を取る時点では既に暫定利用がスタートしている可能性が高く、したがって、認定調査センターが時機に即した説明をすることは不可能です。よって、認定調査センターを説明の主体とするのは適切ではないと考えられます。
5.被保険者の死亡などにより認定調査を行えず、介護度の判定ができなかった場合の暫定利用料金の負担に関することを広く市民へ周知することについて
この点は、申立人が指摘するとおり市民に周知されていないと考えられます。
もっとも、行政に関して市民に周知することが望ましい事項は多数あり、その全てを周知することは不可能であって、周知の対象や方法は限定せざるを得ません。この点に鑑みれば、このことが市民に周知されていないとしても、所管課に直ちに非があるとは認められません。
但し、市民に周知されることが望ましいことは当然であります。そこで、所管課も申立人からの指摘を受けて、介護保険サービスガイドに記載することを検討しているとのことでしたので、この点、付言します。
6.暫定利用料金の公費負担について
この点、現状、新潟市は負担していませんが、市が負担すべき義務があるとは考えられません。したがって、所管課に非があるとは言えません。

以上のとおり判断するものであり、結論として所管課の対応に非があるとは認められません。
但し、介護認定に要する日数について、所管課の運用が法の規定に合致しているとしても、予想以上の長期間を要しているとの感は否めません。所管課においては、認定に要する期間を一層短縮すべく、効果的な対策を講ずることを希望します。
また、暫定利用料金に関しては、根本的には国が対応すべきであるとしても、現状、国が対応していない以上、自治体が何らかの補完措置を講ずることの必要性は高いと考えます。所管課として、何らかの対応策を検討されることを希望します。

このページの作成担当

市民生活部 広聴相談課

〒951-8550 新潟市中央区学校町通1番町602番地1(市役所本館1階)
電話:025-226-2094 FAX:025-223-8775

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