(4-6)生活保護期間中に使用したタクシー代を返却してほしい

最終更新日:2022年11月14日

(4-6)生活保護期間中に使用したタクシー代を返却してほしい

令和4年8月24日苦情申立書受理

申立ての趣旨

生活保護期間中に使用したタクシー代を返却してほしい。

申立ての理由(要約)

私は生活保護を受けていましたが、令和4年2月にかかりつけの病院へ行くためにタクシーを使用してよいか、担当のケースワーカーに電話で問い合わせをしたところ「タクシーを使うのは構わない」ということだったので、病院までの往復にタクシーを使用しました。
その時点では、生活保護が切れていたのですが、そのことを認識していませんでした。
後日、担当者に電話をしたときには「タクシーを使用してもよいが、タクシー代が出るとはいっていません」といわれました。それであれば、生活保護が切れていることを知らせてほしかったことと、生活保護が切れていることを認識できていればタクシーは使用しませんでした。タクシー代を返してほしいです。
その後、生活保護終了の手紙が一か月以上も後になり届きましたがなぜ一か月以上もかかるのでしょうか。
また、生活保護を受けるため、加入していた火災保険を解約しましたが、生活保護が切れてから再度火災保険に加入する際、当初の保険料より負担が増し不利益を被りました。

所管部署

A区健康福祉課(以下「所管課」という。)

調査の結果

令和4年11月7日決定
所管課の対応に非があるとは認められない。

調査結果の理由

当審査会では、所管課から資料を提出してもらうとともに聞き取りを行いました。その結果、以下のような事項が認められました。
1.事実経過については次のとおりでした。
(1)令和3年12月3日申立人が生活保護を申請した。その際、所管課担当者が生活保護制度について次の説明を行った。なお、説明の中で火災保険の扱いについては触れていない。
ア.車や有価証券、不動産等、売却可能なものは売却して生活費に充てる必要があること。
イ.保護費以外の収入があった際には必ず申告が必要であり、その際返還金が出る可能性があること。
ウ.その他、自立更生費など保護制度の一般的事項
(2)令和3年12月6日所管課担当者が生活状況等の確認のため、申立人宅を訪問した。
(3)令和3年12月16日申立人について生活保護を決定した。(保護開始日は申請日に遡る)
(4)令和3年12月21日申立人が所管課を来訪し、生活保護開始に伴う諸手続きを行うとともに、12月分保護費を受給した。所管課担当者は申立人に保護のしおりを渡して生活保護制度について改めて説明したが、その際、申立人から、所有する自動車を売却予定であるとの発言があった。なお、火災保険の解約について言及はなかった。
(5)令和3年12月24日申立人は、自身が所有する自動車の売却契約を締結した。
(6)令和4年1月14日申立人が自動車の売却代金を受領した。
(7)令和4年1月15日申立人が自宅家屋の火災保険を解約した。
(8)令和4年1月17日所管課担当者が申立人宅を訪問し、申立人が自動車の売却代金を受領したことを確認するとともに、申立人から火災保険を解約したことの説明を受ける。その際、売却収入等により、生活保護が停止・廃止となる可能性があることを説明した。
(9)令和4年1月26日所管課担当者が申立人に電話し、2月分保護費が支給された場合、返納になる可能性が高いことを説明した。この時、申立人から自動車に代わる交通手段として原付バイクを購入したいとの申し出があった。原付バイクの購入が自立更生に向けて必要な支出であると認定されれば、購入費用を申立人の収入から控除することになることから、所管課担当者は申立人に対して原付バイク購入費用の見積書の提出を依頼した。
(10)令和4年2月14日申立人から所管課に電話があり、生活保護が廃止になるかもしれないことが不安であるとの趣旨の訴えがあった。所管課担当者は申立人に対し、廃止の可能性もあることを含め、改めて生活保護制度について説明した。また、同日、所管課担当者からも申立人に電話し、原付バイク購入費用の見積書の提出がないことについて問い合わせた結果、申立人として提出の意向がないことを確認した。
(11)令和4年2月15日申立人から所管課に電話があり、タクシーを利用して通院することの可否について問い合わせがなされ、所管課担当者は、タクシーを使用することは構わないとの趣旨を回答した。
(12)令和4年2月21日申立人について、自立更生費(原付バイク購入)の希望がないことを確認したため、自動車売却代金を受領した同年1月14日に遡って、生活保護を廃止することを決定した。
2.生活保護が臨時的な収入増により廃止される場合のタイムスケジュール等については次のとおりでした。
(1)臨時的な収入増により廃止される場合は、当該収入を受領した日が廃止日となるが、本件では自動車の売却代金を受領した令和4年1月14日を廃止日としている。
(2)手続きとしては、売却代金の受領を確認してから生活保護法で規定する算定方法に基づき返還額を確定させ、収入額から返還額を差し引いても6か月以上保護を要しないと見込まれる場合、決裁を経て廃止となる。このため、廃止日は必ず決裁日から遡った日付となる制度設計になっている。したがって、生活保護終了の通知も、廃止日よりも事後の発送とならざるを得ない。
(3)他方、自立更生に向けて必要な費用がある場合には、これを収入から控除することができるが、これに関し、申立人は、令和4年1月26日に自立更生に向けて原付バイクを購入したいと申し出たため、所管課担当者は原付バイク購入費用の見積書の提出を依頼した。結局、見積書は提出されなかったが、所管課は見積書の提出を待っていたため、生活保護の廃止決定がされるまでに日数を要した。
3.生活保護受給者が通院時にタクシーを利用する場合の費用等については次のとおりでした。
(1)身体の状態から公共交通機関の利用が難しい場合には、医師の判断に基づき通院時のタクシーの使用が認められ、費用は扶助費より支給される。
(2)生活保護が廃止された場合には、当然、費用は支給されないし、支給された後に遡って廃止決定がされた場合には支給された金額を返還する必要がある。
(3)令和4年2月15日に申立人から所管課にタクシーを利用して通院することの可否について問い合わせがなされたが、この時、申立人はタクシー代が保護費から支給されるのかとの趣旨は質問していない。また、上記のとおり所管課担当者は、タクシーを使用することは構わないとの趣旨のみを回答している。
4.火災保険の扱いに関しては次のとおりでした。
(1)前提として、生活保護制度は、国が定めた最低限度の生活を保障するとともに、生活の自立に向けて援助する制度であり、世帯収入と国が定める最低生活費を比較して収入が下回る場合に生活保護を受けることになる。この際、生活するために必要不可欠なものを除き、有価証券、車、不動産など、売却可能なものは、売却して生活費に充てる必要がある。
(2)これに関し、一般的な火災保険については、一定程度必要性が認められることから、一律に解約の依頼を行っていない。
(3)申立人は、2019年から10年間で保険料40万円超の家財・建物保険に加入しており、解約返戻金が発生すると考えられた。そのため、所管課は、申立人加入の上記保険の扱い(解約を依頼するか否か等)についてケース会議を開催し検討する予定としていた。しかし、上記(2)の理由から解約の依頼はしていないし、解約の依頼をする可能性があることも説明していない。また、上記(2)と同じ理由から、ケース会議で検討した結果、解約を要しないとの結論になる可能性もあった。
(4)しかし、申立人は、事前に解約予定であるとの意向を所管課に知らせることもなく、ケース会議開催前である令和4年1月15日に上記保険を解約した。
(5)以上のとおり、上記保険については、申立人の自主的な判断で解約したものであった。

以上のとおり、当審査会が調査を行って判明した事実経過などから、所管課は生活保護法の規定に基づき、制度を逸脱することなく業務を進めていることが認められます。
よって、当審査会としては、所管課の対応に非があるとは言えないと判断します。
なお、所管課担当者は、申立人に対しては複数回にわたって生活保護廃止の可能性等を説明していたことから、申立人からタクシー使用の可否の問合せを受けた際に、単に使用の可否だけを回答したものと推察されます。これに対し、申立人は生活保護の制度の詳細を正確には理解しておらず、タクシー代金が保護費として支給されるか否かを確認する意味でタクシー使用の可否を問い合わせたものの、言葉足らずの部分があったものと思われます。この点、所管課担当者が、申立人が、何故、わざわざタクシー使用の可否を問い合わせてきたのかといったことまで思い至れば、申立人の意図に応えることができたものと考えられます。
所管課においては、複数回にわたって説明をしたとしても市民が制度の詳細を正確に理解することは困難である場合があることを前提として、より、丁寧な対応を心がけていただくことを希望します。

このページの作成担当

市民生活部 広聴相談課

〒951-8550 新潟市中央区学校町通1番町602番地1(市役所本館1階)
電話:025-226-2094 FAX:025-223-8775

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