クサギ

最終更新日:2016年6月30日

クサギ(臭木)

科名:クマツヅラ科
生活形:落葉広葉樹
高さによる木の格付け:小高木(5~10m)、幹を立て森林の中層に枝を張ります。
開花期:8月
解説:里山の林縁に見られます。八月に白い花を開くが、咲きはじめには雄しべが伸びて花粉を飛ばします。一方の雌しべは、雄しべが萎れるの待って、直立して他の花の花粉をうけます。近親結婚を避けるために身につけた巧みな仕組みなのです。
観察ポイント・エリア:葉を一枚もぎ取り、においを嗅いでみましょう。クサギは臭い木のことだと納得させられるはずです。虫や動物に食われるのを防ぐための防衛策との説もあります。
※咲きはじめは雄性期、その後は雌性期と呼ばれています。

樹木の季節現象 「その6 クサギ」

クサギの季節現象

 クサギ(臭木)の葉っぱをちぎると、言い表せないくらい臭~いにおいがします。なんと!その名前のとおり「臭い木」なのです。いったい、だれがクサギなんていう名前を付けたのでしょう? その人は、この臭さががまんできなかったに違いありません。

 それではどうしてそんなに臭いのでしょうか? 答えは、他の生き物=外敵から身を守るための自己防衛術なのです。カメムシ(昆虫)やスカンク(動物)なども、そのにおいで有名ですね。

 そんなクサギですが、8月には、真夏の日差しを受けて、とても上品な花がさかせます。白くて細い5枚の花びらと、長くつき出た4本のおしべが特徴です。

 9月になって丸い実がふくらむと、その色は夏から秋への美しい季節現象となります。10月頃、がく片のきれいな紅色と、熟した果実の藍色が見事にきわだって、とても美しい光景です。

 にいつ丘陵では少数派ですが、この頃が見ごろと言えます。

樹木の季節現象「その16 クサギが演ずる真夏の季節現象」

 森の木の多くは、春から初夏にかけて花を咲き終わります。そんな中でクサギは、真夏を待って花を開く数少ない木の一種です。強い日差しにもひるまずに、小枝の先に白い花を咲かせるのです。

 クサギの花は、開いた初めの日には、熟した花粉をつけた雄しべ(葯)が上に伸び出ます。一方の長い雌しべは、頭(柱頭)を下げたまま花粉を受けようとしません。【写真左側=開花初日の花(雄性期)】

 翌日には、逆に雄しべが頭を下げ、雌しべが上にピンと伸びて、ほかの花からの花粉を待ちます。【写真右側=2日目の花(雌性期) 】
 クサギの花のこの行動は、同じ花の雄しべの花粉を避けるためで、健康な子孫を残すためにクサギが身につけた巧みな営みとみられています。

 クサギの花粉を雌しべに運ぶのは、長いストロー(口吻)をもっている大型のアゲハチョウの仲間です。

 ストロー(口吻)が長いのは、花の奥に貯えてある蜜をゲットできるからです。そのとき雄しべに触れ花粉を体に付けたチョウは、そのままほかの花に飛び移り、花粉をその花の雌しべに渡します。クサギはアゲハチョウに花粉を運んでもらい、アゲハチョウはクサギの蜜をゲット!

 このように、クサギの花とアゲハチョウは、お互いに助け合うつくりになっているのですね。クサギの周りをアゲハチョウの仲間が飛び交う風景は、自然の摂理(共進化=お互いに関連して進化)がつくりだす真夏の季節現象なのです。

樹木の季節現象「その17 クサギのその後」

 里山の秋は、木々が種子を育て上げる大切な季節です。季節は秋になり、今回は、クサギのその後を訪ねてみました。

 花が咲いていた跡には、濃い紅色をした星型の皿が開いています。その真ん中に、宝石のように輝く美しい藍色の果実(み)をのせていました。

 夏から秋への変身ぶりは、(写真2)と(写真3)を比べてみるとよくわかります。

 果実(み)をのせている皿は、花を支えていた淡いピンク色の萼が開いたものです。そして藍色の玉は受精して実った果実(み)です。玉は柔らかく、つぶしてみると、藍色の液の中に堅い皮(=核)に包まれている種子が現れます。子孫を育む種子は、大切に二重、三重に保護されているのです。

 クサギ(臭木)は、日ごろはあまり目立たない木で、その名のように葉っぱをちぎると、鼻をつく臭いがします。しかし、秋には宝石のような美しい果実(み)をつけて鳥を呼び、私たちの目を引きつけます。その存在をアピールする里山の個性的な木なのです。

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