選考委員長・市長コメント
選考委員長コメント
野田 一夫
第4回安吾賞の選考を終えて
昨年秋、第4回「安吾賞」受賞者に渡辺謙さんが決まったと聞いた人の多くが、当時話題の映画『沈まぬ太陽』との関係を連想されたようだが、それは全くの誤解である。毎年強調してきたように、「安吾賞」は“生き様賞”であるから、映画俳優としての氏の生き様が多くの選考委員に高く評価されたのであって、特定の(映画)作品での演技は選考に全く影響を与えていない。たしかに俳優にとって演技力は必須の能力だろうが、やはりその人の人柄が演技力に反映されてはじめて観客の心を打つものであろう。全ての人間にとって“生き様賞”とは、その人柄の人生への反映にほかならない。氏の成功は単に天与の風貌や体格とか、親の七光りや特定の人物やグループの引き…といったものによるものではない。
氏は若くして俳優を志してある劇団に入り、20歳代末にはNHK大河ドラマ主演での好演技で一躍スターダムにのしあがり、洋々たる前途を確実視されながら30歳代のほとんどを難病との戦いに明け暮れながら仕事と取り組み、やっと難病を克服して40歳代に入るや突然米国映画「ラストサムライ」に抜擢されて好演し、以後は懸命に英語力を増幅させつつ国際派俳優として華々しい活躍をつづけてきている。
この一貫して穏やかならざる人生の展開過程に反映された氏の並々ならぬ生き様、これこそがわれわれ選考委員に深い感銘を与えてやまないものであったことを、改めて強調しておきたい。
なお、「安吾賞」第4回目にして初めて新潟出身者が受賞されたことも、偶然だったとはいえ、選考委員一同にとって嬉しい結果であった。
新潟市長コメント
篠田 昭
第4回安吾賞は、俳優の渡辺謙さんに決定しました。
新潟県魚沼市(旧北魚沼郡小出町)のご出身である渡辺さんは、卓越した演技力と存在感で若手のころから映画やテレビ、舞台などで次々と大役を演じてきました。二度にわたり大病に襲われますが、その度に不屈の闘志で乗り越え、俳優として見事に復帰。その後は海外映画にも進出し、日本を代表する国際俳優として確固たる地位を確立しています。
渡辺さんの生き方、国内のみならず世界の大舞台で挑戦を続ける強い信念と行動力は、「現代の安吾」にふさわしいといえます。
今回初めて、新潟県出身の方に安吾賞を差し上げることになりましたが、これからも新潟との絆を大切に持ちながら、世界で活躍していただきたいと思います。
また、新潟市にゆかりのある方にお贈りする新潟市特別賞は、作家の野坂昭如さんに決まりました。
野坂さんは終戦後、新潟県副知事を務めていた実父・野坂相如さんに引き取られ、旧制新潟高等学校(現新潟大学)に編入。副知事公舎で青年時代を過ごしました。作家としての活躍をはじめ、大変多才な方ですが、衆議院議員選挙に新潟3区から立候補したときのことは、当時私も取材をした経験から大変印象に残っています。
本日の授賞式はご欠席ですが、戦い続ける野坂さんのダンディズムに大いなる敬意を表したいと思います。
新潟市はこれからも反骨と飽くなき挑戦者魂の安吾精神を発揮する「現代の安吾」に光を当て、安吾賞を広く発信してまいります。