(5-2)情報公開請求における公開方法の不適正な運用と所管課の不当な対応
最終更新日:2024年1月17日
(5-2)情報公開請求における公開方法の不適正な運用と所管課の不当な対応
令和5年6月12日苦情申立書受理
申立ての趣旨
情報公開請求における公開方法の不適正な運用と所管課の不当な対応
申立ての理由(要約)
情報公開請求により、文書保有課である広聴相談課が公開するとした書類を、6月〇日に広聴相談課に出向き交付を受けようとしたときに、交付方法である「写しの窓口による交付」の運用について、他の課は、公開文書のコピーを用意しコピー代を納付するための「納入通知書兼領収書」を発行し、領収書によりコピー代の納付を確認した上で公開文書の写しを交付している。
広聴相談課の場合は、市政情報室に案内され、備え付けのコピー機で公開文書のコピーを行い、市政情報室発行の領収証が渡される。この取り扱いは不適正であると考える。
更に、市政情報室にて領収証の発行を受けた際、市政情報室職員が、「原則、文書を公開する課が領収書を発行することになっている」との発言に対し、広聴相談課職員は応じなかった。
また、このことに対し説明を求めたところ、広聴相談課の部屋に誘導されたため広聴相談課へ出向くと、ビデオカメラがセットされていた。課へ誘導してビデオカメラにより撮影する行為はやめてほしい。
所管部署
市民生活部広聴相談課(以下「所管課」という。)
調査の結果
令和5年9月15日決定
所管課の対応に非があるとは認められない。
調査結果の理由
当審査会では、所管課から資料を提出してもらうとともに、申立人及び所管課から聞き取りを行いました。
その結果、以下のような事項が認められました。
1.本件に関する事実経過は次のとおりでした。
(1)令和5年5月〇日、申立人は市に対して情報公開請求を申請し、同年6月〇日、一部公開決定がされた。
(2)同月〇日、申立人が公開文書の閲覧及び写しの交付を受けるため所管課を訪問した。
(3)所管課の担当者は、申立人を市政情報室の閲覧コーナーに案内し、申立人から公開文書を閲覧してもらうとともに、市政情報室の有料コピー機を使用してコピーし、写しを交付した。なお、所管課においては、申立人が、所管課が保有する文書の情報公開請求を申請して公開決定(一部公開決定を含む)がされた場合には、従前から同様の対応をしていた。(以下「本件対応」という。)
(4)市政情報閲覧コーナーにおいて、申立人は所管課の担当者に対し、申立ての理由に記載している、市政情報室備え付けのコピー機で公開文書のコピーを行い、市政情報室発行の領収書が交付されることは不適正であるとの申入れをした。これに対し、所管課の担当者が応答したが、申立人は納得しなかった。
(5)その後、申立人は所管課の窓口に移動した。同窓口にはビデオカメラが設置され、窓口における様子についてビデオによる撮影が行われた。
2.本件に関する申立人の主張の要旨は申立の理由(要約)記載のとおりでした。
3.上記の事実並びに申立人の主張を踏まえ、本件苦情申立ての趣旨において、次の2点について考察します。
(1)本件対応は不適正であったか否か。
(2)申立人の行為をビデオで撮影するために、所管課窓口に誘導したのか否か.
4.上記3(1)(2)に対する所管課の説明の要旨は次のとおりでした。
(1)本件対応は不適正であったか否かについて。
(ア)情報公開請求により、請求者が公開された文書の写しの交付を受ける場合には、市職員向けの手引きでは、交付にかかる費用は、公開決定通知書とともに送付する納入通知書により事前に納入してもらうことが原則であるとされている。但し、それ以外の方法が禁じられているものではない。
(イ)情報公開請求により、請求者が公開された文書の閲覧・交付を希望する場合には、請求者は、まず、公開された文書を閲覧し、必要な部分だけ写しの交付を求めることとなる。この場合、上記(ア)の原則に従うとすれば、次のような手順を踏むこととなる。
(A)請求者から、公開文書全部の写しを交付するために必要な費用全額を事前に納入通知書により金融機関の窓口等で納付してもらう。
(B)請求者が公開された文書を閲覧し、交付を希望する部分を特定してその部分だけの写しの交付を受ける。
(C)事前に納付した費用と、実際に写しの交付を受けるために要する費用(写しの交付を受けた枚数分の費用)との差額については還付することとなり、市(担当課)は請求者に対して、還付先の金融機関名や口座番号を聞き取り、還付金の振込手続きを行う。
(ウ)請求者が公開された文書の閲覧・交付を希望する場合において上記(ア)の原則に従って処理しようとすると、上記(イ)のとおり、公開が認められた文書全部の写しの交付に要する費用を、請求者は一旦、納付する必要がある。また、公開文書を閲覧した結果、写しの交付を希望しない文書があった場合、交付費用に差額が生じ、既納付額の還付手続きが必要となるため、請求者は還付先の金融機関名や口座番号などを所管課へ伝え、所管課は還付金の振込処理を行うなど、双方に不要な手間が生じることになる。
そこで、所管課においては、双方にとって合理的なやり方ができるよう、平成30年に情報公開制度を所管する市政情報室とも相談のうえ、情報公開請求の請求者が、公開された文書の閲覧・交付を希望したうえで文書の一部についてのみ写しの交付を希望すると予想される場合には、本件対応をしている。
申立人は、継続的に所管課が保有する文書の情報公開請求をしているところ、所管課は従前から本件対応をしており、これまで、申立人から本件対応について苦情や異議等の申立てを受けたことはない。
(エ)本件対応では、市政情報室の有料コピー機を使用して、公開文書をコピーし写しを交付するが、写しの交付に要する費用(コピー機の使用料)は、公開された文書を保有する部署(本件では所管課)の歳入ではなく、コピー機を管理する市政情報室の歳入となる。そのため、情報公開請求の請求者が領収証の発行を希望した場合には、市政情報室が領収証を発行する。所管課は領収証を発行することができない。
従前、申立人が公開文書の交付に要する費用の領収証の発行を希望した場合には市政情報室が領収証を発行しており、本件についても市政情報室が領収証を発行している。
(オ)申立人は、「市政情報室職員が『原則、文書を公開する課が領収書を発行することになっている』と発言した」との趣旨を説明しているが、所管課は、市政情報室職員が申立人に対してそのような発言をしたか否かは把握していない。
(2)申立人の行為をビデオで撮影するために、所管課窓口に誘導したのか否かについて。
(ア)本件では市政情報室における申立人とのやり取りが長くなり、そのなかで申立人は申立ての理由に記載している、市政情報室備え付けのコピー機で公開文書のコピーを行い、市政情報室発行の領収書が交付されることは不適正であるとの話を執拗に繰り返すなどの行為を行った。そのため、所管課担当者は、このままでは市政情報室の他の利用者に迷惑が掛かると考え、申立人との応答をいったん打切り、申立人に対して、話があるのであれば所管課窓口で聞くとの趣旨を伝え、その場を去って所管課事務室に戻った。
(イ)その後、申立人が所管課の窓口を訪れ、「なぜここに呼んだのか。話は何なのか。」等と発言したため、所管課担当者は「話があれば事務室で聞くと伝えた。当課から話すことはない。」と回答した。その後も同様の趣旨の話の繰り返しとなった。
(ウ)他方、所管課においては、これまで、申立人による所管課職員へのさまざまな迷惑行為によって、業務に支障が生ずるような事態が発生していた。そこで、所管課では、申立人による問題行動が発生しそうな場合には、刑事及び民事における法的措置に向けた証拠保全のためにビデオカメラで撮影することとし、警察とも相談のうえ、窓口に常にビデオカメラを設置しておくこととした。但し、常にビデオを撮影しているわけではなく、申立人の問題行為の映像を記録できるよう、職員が「問題行動が発生する可能性がある」と判断した場合に撮影するようにしている。
そのため、本件において申立人が所管課の窓口を訪れた際もビデオカメラが設置されていた。但し、申立人が窓口を訪れる前の時点では撮影していないし、申立人が窓口を訪れて上記(イ)の発言をした時点でも撮影を開始していない。
撮影を開始したのは、所管課担当者との窓口でのやり取りが生じてから10分程度経過し、申立人が、所管課職員に対して問題行為に及ぶ可能性があると判断した時点である。実際、ビデオカメラは窓口わきの申立人の近くに設置してあり、所管課職員がカメラのスイッチを入れた行為も、申立人が十分に確認できる距離にある。
以上によれば、考察事項の(1)本件対応は不適正であったか否かについては、所管課は、平成30年当時、本件対応を始めるにあたり、情報公開請求の担当部署とも相談を行った経緯を踏まえ、情報公開請求の請求者の便宜のために本件対応をしていること、本件対応をする場合には所管課が領収証を発行することはできないことが認められることから、不適正とは言えないと考えます。
なお、所管課は、申立人が本件対応について疑念があるとのことを認識したため、今後は一般的な方法を執るとのことであるので付言します。
また、考察事項の(2)申立人の行為をビデオで撮影するために、所管課窓口に誘導したのか否かについては、所管課の窓口にビデオカメラが設置されていること自体には合理的理由があること。また、申立人をビデオカメラで撮影するために窓口に誘導したのではないとの所管課の説明には、不合理な点は認められません。
よって、所管課の対応に非があるとは言えないと考えます。
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